県の国際交流協会のイベントで、大島希巳江さんのお話が聴けるというので、行ってきました。
大島さんは、神奈川大学外国語学部の教授で、異文化コミュニケーション学、ユーモア学などを研究されています。
この方のすごいところは、英語落語をプロデュースし、プロの落語家さんたちを引き連れて世界各国で海外公演ツアーを行い、自らも英語落語を演じてしまうことです。
YouTubeに海外公演での彼女の落語がいくつか載っています。
とにかく明るく楽しく、英語も聞き取りやすいですから、必見ですよ!
Rakugo in English-Zoo by Kimie Oshima (←動物園)
Gonsuke's fish (←権助魚)
昨年、教室の発表会で中学生に英語落語を発表してもらおうと、ネットで英語落語について検索していた時、この動画に行きあたりました。以来、たいへん秘かにファンとなっていたのですが、まさか盛岡でご本人のお話が伺えるとは!
今回のテーマは、ご専門である、異文化コミュニケーションやそれにおけるユーモアの役割。
タイトルはちょっと硬いですが、最初から最後まで落語を聞いているかのように楽しく、かつ興味深いものでした。
オレンジと白の市松模様の着物姿の大島さんは、こんなグレートな方をつかまえて言うのもなんですが、大変
かわいらしかったです。
以下、覚書。
・お互いに好意を持っていると自然としぐさや態度、行動が似てくるという「ミラーリング効果」 こちらが笑顔で楽しい話しをすることで、相手も笑顔になり、好意的な気持ち、異質なものを受け入れやすくなる。
・総じて「英語嫌い」の落語家さんたち 英語で演じてもらうために採った方法は、
全編カタカナのルビを振った原稿の丸暗記(!)
でも繰り返し演じ、聴衆の反応を見ているうち、次第に意味を理解し、英語を話せるようになっていく。
どんなに英語が話せるようになっても、やはり英語嫌いの噺家さんたち。落語をやりたい、という動機があればこそ英語に取り組める。
・異なる文化圏での「落語」 公演終了後のあちらの感想は、
「日本人って実はおもしろい人たちなんですね」 観客のほとんどは落語というものを初めてみる
海外の観客は参加型。落語のスタイルに慣れるまでは、登場人物のセリフにいちいちリアクションが返ってきたり(笑)
インドの小学生たちは質問や意見を述べたくて、噺の途中でどんどん手を挙げる。「僕は、その話のオチはこうだと思う」とか。
理解しがたいジェスチャーに軽く説明をいれる。
蕎麦や熱い汁をすする音、slurpは、海外では拒否反応が強い。落語でこれをどう演じるか。
(空気を取り込むことで麺やつゆの香りがより一層引き立つ、と説明した上で、音を出して演じるそうです)
・日本を語るなら、日本人の英語で シンガポールで話される英語がSinglish、インドのそれがInglishなど、英語も使われる地域によって多様。
日本人は
「日本の英語」を形作っていく必要があるのでは(発音だけでなく、表現の仕方など)
・英語落語の海外公演立ち上げ時の苦労 英語で落語なんて邪道!という観念をどう打ち破るか。
英語落語を「カリフォルニア巻き」になぞらえたら、小朝師匠が納得。
実際に英語落語を一席・・・ということで大島さんが演じてくれたのが「動物園」。
(上のリンク先からみられる動画も「動物園」です)。
話は知ってましたし、他の落語家さんが英語で演じるのも聞いたことがありましたが、
やはり生の落語はいいです。ライブ感がなんともいえません。
噺家さんの、楽しそうにノッてしゃべってる高揚感がこちらにも伝わってワクワクしてきます。
あと、大島さんも冒頭に話されてたんですが、人は、周りに人がいるときには、よく声を出して笑うのだそうです。
無意識のうちに「おかしいね、楽しいね」と周囲の人間とコミュニケートしようとしてるんですね。
みんなが笑うし自分も笑う。笑い声でさらに噺家さんがノッてくる。
江戸っ子のべらんめえ調から田舎言葉、独特の花魁言葉など、日本語の豊かなバリエーションを楽しめ、
日本の様々な風物や人情を味わえる日本語の落語はもちろん大好きですが、英語の落語も楽しいです。
演じる方も、聴衆も、また違った切り口からその噺を眺めることができるように感じます。
普遍的な部分が掘り出される、というか。
ローカルなものが、グローバルな光を帯びる瞬間、というか。
以上、落語とQ&Aタイムを含め、アッという間の2時間。
たっぷりと活動エネルギーを補充させていただきました。